かんりにんさんの

 入院生活回想録*前編*

忙しい仕事中心の生活から逃げ出したい気持ちもあって、機会があれば短期入院を一度はしてみたいと思っていた。今回は(強がる意味を込めて)願ってもないチャンスと捕らえ、楽しみにしてみたものの、実際は。。。大変な体験となってしまった。(笑) 残念ながら我々世代も“病気”を身近に感じざるを得ない年齢となり、少しでも皆さんのお役に立てばと、今回の体験を思い出しながらも書いてみることにしました。

○病気の発見
 心筋梗塞といっても急性と慢性と2通りあり、僕の場合は慢性で、心臓の周りの冠状動脈がじわりじわりと詰まっていくタイプだった。
 初めて知らされたのは、昨年7月の健康診断の時。心電図を見て先生が首をかしげて、「今まで心臓のことで何か言われたことはないか?」と聞かれたけど、実のところ一度もなかった。心電図が心筋梗塞に見られる波形をしているので、精密検査を受けるようにとのこと...
 と、言われても何の自覚症状もなく、心電図の微小な違いを説明されてもピンとこなくて精密検査せず1年が経過。
 今年の7月にまた健診があり、前回と同じ先生。精密検査を受けていないことでひどく叱られてしまって、今年も再検査をパスしたら来年なんて言われるかわからんぞ・・・ てなことで、渋々精密検査を受診する事に決めた。

○精密検査の受診
 今度は病院を代えて受診することに...
 循環器系では良い機械を持っていると、もっぱら評判のある、また、長く通院になるかもしれないことを考えて、会社の近くのKS病院に行った。
 心エコー検査での映像は、本当に良く映るね。心臓の鼓動に合わせて弁がペコペコ動くのまで良く見えて一種の感動さえ覚えたよ。(笑)
 心臓の先端の一部が、若干動きが鈍いらしくって、あんなにクッキリ見える画像なのに、よくよく先生から指摘されて、それをジッと凝視してはじめて、「そういえばそうですかね〜」みたいな、のん気な話。(笑)
 手首の動脈から、カテーテルを突っ込み、造影剤を流して詰まりの部位を見つけ、続きに詰まっている所を風船で広げ、ステント(金網)を入れるという、卒倒しそうな説明を受け、入院の日程が決まってしまった。

○9月14日(木)入院当日
 入院は物心付いてから初めての体験でもあるし、めったとない骨休めの機会と思っていたので、本を2冊も購入して、ある意味ワクワクしながら約束の朝10時に病院に到着した。
 まず、身長・体重の測定をした後、型通りの説明を受けてから病室に案内された。 病室は2人部屋。 これまで人の見舞いに行くと、4〜6人の大部屋を見ていただけに、これは快適と喜んでいたのはここまで...
 自分的には特に仕事はなく、血圧や体温などのバイタルチェックだけ。さぁ本を読むぞーと張り切っては見たものの、問題は同室の相棒のこと。
 高齢者の男性で時間が経つにつれて、多少認知症かいなと思われるようになるとそれが気になり始めて...夜中になるとそれが決定的なものに...
 夜9時消灯なんて、普段の生活習慣じゃぁ考えられなくて、それでなくても眠りの浅いとこへ持ってきて、夜遅くに看護師連中があわただしく動き回りはじめた。どうも下着を汚してオムツに変える様子がうかがえる。明け方にはもっと最悪。今度はポータブルトイレを引っくり返したみたいで、看護師・介護士数人がかりで大騒動。
 朝、看護師に会うと「清水さん昨日は寝られんかったでしょー。病室変わります?」で、病室を移動することに...。今度は4人部屋。

○9月15日(金)いよいよ手術の日
 今日は4組手術の予定で、その一番最後、トリを飾る?ことになっていた。(笑)
 朝から点滴を付けられ、どこに行くにしても点滴を転がして歩くことになってしまった。 どこの病院でも点滴患者の光景はよく眼にするもんだが、いざ自分がそうなると何と不自由な繋がれの身だろう...(笑)
 手術予定は夕方なので、お母ちゃんに頼んでCDデッキを持って来てもらい、音楽聞きながら推理小説を読む、余裕の時間を過ごした。(^_^)v
 夕方5時頃に、嫁さんと長男が(手術の立会いに)来てくれた頃から、あぁ〜オレは病気じゃったんじゃーと思い出し、今から始まる手術はどんなんじゃろう?と少し不安になってしまった。^_^;
 車イスに乗せられ、看護師にそれを押され、家族と共にエレベーターに乗り込んだ。5階の病室から2階へ、エレベーターから手術室までの、薄暗い静寂な長い廊下を...車イスの車輪の音だけが聞こえる。(なんと不気味な光景だろう)(笑)
 手術室に着くと、車イスから自分で手術台にあがらされた。仰向けに寝ると手術台って狭いね。肥満体の体なら完全にはみ出すだろうし、オレみたいに寝相が悪いと、こりゃぁ寝込むと落ちるなーとか、馬鹿なことを思いながらも、こうなりゃぁまな板の鯉で、どうにでも好きにしてくれって、腹も決まった。
 術着1枚じゃ少し肌寒かったけど、まず手首や足の付け根周りを、消毒液でベッチャベチャに塗りたくられて、次に左手首辺りに麻酔注射をされ、いよいよ試合開始。 左手首の動脈(脈打つ所)からワイヤーを突っ込んで、一路心臓を目指して行く。次にカテーテルを挿入し、造影剤を流し込むと、モニターには、一気に血管が映し出され、しっかりと映像と写真で記録されていく。
 しばらくすると冷静な自分がいて、周りを観察する余裕も出てきた。
 手術中の2〜3人の先生方は、ず〜っと正面を見据えたままの姿勢で、粛々と作業が進んでいくという一種異様な光景に思える。 そーか、目の先にはモニターがあって、それを見ているだけで用が足りるのか、って妙に納得。 それと気がつけばさっきから、ピッ、ピッ、ピッ、っと一定のリズムで音がするけど何の音だろう? そーか、オレの心臓の音なんだ。 テレビなんかで手術の代名詞みたいに使われる音。 これがピーーーなんて長くなると『ご臨終です』なんて言われる、あの音じゃぁ....なんてつまらんことを考えていたら、おかしくて笑いそうになったよ。(笑)
 手術台は狭く、身動きもできないから、疲れも出るし飽きても来るし、『早よう終わらんかな』って思ってるうちに、店じまいの様相。
 手術場横の映像操作室に家族も呼び出され、ドクターから説明があった。
 心臓の周りは3本の冠状動脈が取り囲んでいるが、映像の中のその1本を指して、ここが詰まりかけています。他の2本より流れ方が遅いでしょ。
 血液の流れが造影剤によって、瞬時に映し出されるが、そう言われれば、1本だけコンマ何秒一呼吸遅れて流れるのが確認できる。
 詰まっている個所は、一番太い血管のしかも分岐点辺りの太いところで、手首の動脈からでは、器具が入らなっくって今日はもう止〜めたっと...
 明日、足の付け根のもっと太い動脈から再チャレンジすることに順延となった。

                          ( 後 編 へ 続 く )

2006.12.26

F 戻る  進む H